管理人家の近くには美術館の倉庫みたいな施設がある。
ちょっとした庭が設けられていて、ラトビアの彫刻家の作品のレプリカとかが庭に置いてあったりする。倉庫なのだが一部は展示しているし時々催し物とかもしているようである。管理人一家にとっては単なる散歩コースの一部なのだが、そこに夏限定のカフェが開いていたのである。売り子のお嬢さんにぴえちをけしかけて、可愛いわんこを撫でまくり、でコーヒーをタダにしてもらおうとしたがダメだった。
というわけで3ユーロ50セントもするお高いカプチーノを買う羽目になったのだが、
「カプチーノは普通のえんどう豆乳とバニラ風味のえんどう豆乳がありますがどちらにしますか?」
という大変なぞの多い質問を受けたのである。まず管理人は最初理解できず、
「普通の牛乳で」
と返すと
「ここではベジタリアン用のミルクだけなんです」
ということであった。
管理人はぴえちをこねくり回した後のお嬢さんのにこやかな顔を見ながら
「ああ、面倒なカフェにきてしまった」
と思っていたのであった。しかし、若いお嬢さんに弱い旦那は
「ん?えんどう豆乳だけだって、面白そうだね」
と言い放ち、えんどう豆乳のカプチーノを管理人用に注文したのであった。自分はブラックなのでどうでも良いということなのであろう。
ベンチに座ってえんどう豆乳のカプチーノを啜ると、それはもう目眩くエンドウ豆の味であった。コーヒーの味がわからないぐらいのえんどう豆味であった。
なぜエンドウ豆乳なのか、どうして普通の豆乳じゃないのか。そもそもどうしてベジタリアンにこだわるのか、さまざまな疑問が残るカフェであった。それでもうららかな日差しの中、ベンチに座ってコーヒーを啜るのはちょっと楽しい時間であった。